日本酒の知識

日本酒の主原料「米麹」はタンパク質とでんぷんを分解する酵素を出す

日本酒の主原料は、水と米麹。

そもそも麹とは、米麹とは何なのか、麹はどんな働きをし、私たちの身体、健康にとっていかに有益かということ、さらには、世界の発酵食品ともあわせて紹介していきたいと思います。

日本酒の主原料「麹(こうじ)」とは

麹の画像

『麹菌』とは、アスペルギルス属に分類されるカビの一種で、蒸した米や麦、豆などの穀類に生やしたもの。

日本人の食生活には欠かせない発酵食品とは、切っても切り離せません。

 

その代表が醤油、味噌、酢、味醂といった発酵調味料、そして日本酒、甘酒、麹漬けなどの発酵嗜好品で、これらはすべて麹菌を活用した発酵食品です。

 

麹菌は日本人が育んできた日本特有の菌であり、2006年には日本の『国菌』に定められました。

米麹とは

日本酒、甘酒や塩麹の原料となる『米麹』は、米に『黄麹菌(ニホンコウジカビ)』という麹菌を繁殖させたものです。

 

麹を作る作業のことを「製麹(せいきく/せいぎく)」といいます。

麹を作る麹菌を種麹と呼び、種麹は種麹屋にて作られています。

醸造業界では種麹のことを『もやし』、種麹屋のことを『もやしや』と呼んでいます。

米を蒸して、そこに種麹を撒き、一定の温度(35℃前後)に保つと、48時間後には蒸米の表面全体に菌糸をつくり、米麹が出来あがります。

 

ちなみに、蒸した大豆に同じく種麹を撒いて保温すると、72時間後には大豆麹ができ、これは醤油や味噌の重要な原料となります。

麹菌がタンパク質とでんぷん質を分解するために出す酵素

麹菌が穀類に繁殖して菌糸を伸ばす時に、さまざまな酵素を作り出します。

その中でも特に大きな役割を果たす2つの酵素が、タンパク質をアミノ酸に分解する酵素『プロテアーゼ』と、でんぷん質をブドウ糖に分解する酵素『アミラーゼ』です。

 

麹菌によって生まれる2つの酵素の働きで以下のような効果があります。

麹菌の酵素の働きの効果
  1. 食材の栄養価が高まる
  2. 食材を体内に消化、吸収しやすくする
  3. 味わいが増す

このように、微生物の働きによって成分が分解されたり変化が生じ、その結果人間にとってより有益になった食材が『発酵食品』です。

 

この『分解』というプロセスのことを、『発酵』といいます。

麹菌の発酵力

実は、『発酵』と『腐敗』の仕組みは同じです。

 

菌、微生物の働きによって、食物などを分解・変化させる、それが人間にとって有益ならば『発酵』、有害ならば『腐敗』と呼んでいるだけのことなのです。

 

麹菌や乳酸菌、納豆菌、酵母菌といった人間にとって有益に働く発酵菌は、人間にとっての腐敗菌よりも強く、発酵菌が繁殖している場所に、腐敗菌は入り込むことができません。

発酵食品が腐敗しにくいのは、発酵菌が活動しているからです。

 

まったく同様のことが、腸内環境にも当てはまります。

発酵菌が優勢ならば、腸内で人間にとって有益な菌の活動が活性化し、病原菌の侵入を防ぎ、健康な状態が保たれます。

 

腸内の菌を説明する際には『善玉菌』『悪玉菌』といいますが、さらに人間の腸内には『日和見菌』が過半数を占めています。

 

発酵菌はまさに『善玉菌』で、『日和見菌』とはその名の通り、形成が有利な方の味方となる働きをします。

理想的な腸内細菌のバランスは『善玉菌3:悪玉菌1:日和見菌6』と言われています。

 

悪玉菌が1.5を超えると、腸内環境の悪化し、さらに免疫にも影響を与えます。

免疫とは、人体にとって有害な菌やウィルスなどを外的要因やがん細胞と戦い、身体を守る仕組みと働き、『自然治癒力』と言い換えるとわかりやすいでしょう。

この免疫がきちんと働くかどうかは、腸内環境の良し悪しが鍵となります。

 

『人間が持つ免疫機能は、その70%を腸管免疫に依存している』とも言われるほどです。

近年、私たち日本人の約4割が発症しているというさまざまなアレルギー疾患も、免疫機構の誤作動が原因であることが、近年の研究であきらかになりつつあります。

 

さらに“腸は心の鏡”という言葉があるほど、精神的な疾患とも無関係ではありません。

世界の発酵食品

発酵食品

『発酵食品』と聞いて思い浮かべるのは何でしょうか?

 

日本酒や焼酎などのアルコール類はもちろん、身近な味噌、納豆、醤油、漬物や塩辛、また酢、みりんなどの調味料すべて発酵というプロセスを経て完成します

発酵食品は日本だけでなく、世界各地にも存在します。

私たちにも馴染みがあるところでは、パン、ヨーグルト、チーズ、キムチ。

また中華料理に用いる豆板醤やタイ料理に欠かせないナンプラー、プーアール茶など一部の茶葉も、実は発酵食品です。

各種のお酒ももちろん該当します。

いろいろな菌の中でも特に知名度が高いと思われるのは、『乳酸菌』。

 

味噌や醤油、ぬか漬け、酢、そして日本酒も含め、日本古来の発酵食品の多くは乳酸発酵していますし、キムチやザーサイ、またドイツのキャベツの塩漬け『ザワークラウト』や、実は『ナタ・デ・ココ』もココナッツの果汁を発酵させた発酵食品です。

世界に誇る日本の発酵食品

日本は気候、風土に恵まれ、世界でも有数の発酵先進国であり、日本の発酵食品の多くは、麹を用います。

上記に見てきたように、麹菌の優れた働きから生まれる日本の発酵食品は、日本が世界に誇る文化です。

思えば、現代のように、微生物の働きやそれらがもたらすさまざまな効果を科学的に解明することができなかった遥か遠い昔から、日本人は麹の力を身体で感じ、理解し、ごく自然に食生活に取り入れていたのですから、先人の知恵には頭の下がる思いです。

 

とはいえ、菌の世界はとても神秘的。

まだまだ解明されていないことも多く、研究が続けられています。

 

たとえば、『アスペラチン』という、麹菌が作り出す新規の抗菌物質があります。

この物質に、がん細胞の抑制効果があるということが近年の研究で明らかになりつつあります。

日本酒のアルコール度数の秘密

日本酒は発酵し終わった原酒の段階で、アルコール度数は20%を越します。

これは蒸留しない酒(醸造酒)としては、世界一アルコール度数の高い酒(ちなみにビールは4~5%、ワインは10~12%)です。

 

一体なぜ日本酒だけがこのように高い度数のアルコールを出すことができるのか、最近その謎が九州大学名誉教授の林田博士によって解明されました。

 

麹の生産するリピッドプロテインという複合タンパク質が、アルコール発酵を司る清酒酵母を強力に活性化させて、多量のアルコールを生産させていることが発見されました。

 

麹菌は、そのような特殊機能物質をつくる他に、多種にわたる必須ビタミン類を生合成して麹の中に残し、また必須アミノ酸やペプチド、ミネラルなども豊富に含みます。

 

ある研究によると、麹という小さなひと粒に、なんと400成分もの物質が詰め込まれているというから驚きです。

 

そのなかには、私たちがまだまだ知らない素晴らしい機能性を持った物質もあることでしょう。

麹という日本特有の発酵物は、まさに世界に誇るべき素晴らしい文化なのです。

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すぎたま
日本酒メンター・福岡のきき酒師|“やさしい日本酒案内人”として日本酒をもっと気軽に楽しめるように情報をお伝えしています!|好きな銘柄は「風の森」「鳳凰美田」「田中六五」。|住吉酒販(福岡県)公認パートナー|唎酒師(ききさけし)・日本酒ナビゲーター|日本酒好き本職IT系サラリーマン|酒屋さんをはじめとするWebサイト制作やWebツール活用などのお手伝い
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