日本酒の知識

知って得する日本酒の知識!日本酒の要「酒母(しゅぼ)造り」とは

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日本酒の主原料「米麹」はタンパク質とでんぷんを分解する酵素を出す」では、米麹が作られる過程についてご紹介しました。

そして、「日本酒の元祖「どぶろく」とは?伝統の作り方とおすすめどぶろく」では、家庭で簡単につくれるどぶろくの作りかたを紹介することで、どのように酒(アルコール)が発生するかについての流れを見ました。

今回は、発酵プロセスがタンクの中の微生物のどのような働きで起こっているかについて見てみたいと思います。

日本酒の酒母の造り方は2種類ある!速醸酛造りと生酛造り

酒が作られる際のアルコール発酵は、酵母が糖分を食べてアルコールと炭酸ガスを作り出すことで進んでいきます。

その糖分となるのが「麹(こうじ)」です。

麹を造るところから酵母ができあがるまでの工程を、「酒母(酛:もと)造り」と呼びます。

 

さて、ここでひとつ知っておきたいのは酒母を作る方法は2種類あるということです。

酒母造りの方法
  • 速醸酛(そくじょうもと)造り:醸造用の乳酸を添加することによって酒母をつくる
  • 生酛(きもと)造り:江戸時代に確立した伝統的な酒母づくり
生酛造りの「五人娘」ができるまでの画像出典:寺田啓佐『発酵道』
速醸造りの日本酒ができるまでの画像出典:寺田啓佐『発酵道』

伝統的な酒母の造り方:生酛造り

「生酛造り」の大きな特徴は自然の乳酸菌が乳酸をつくることです。

酒母の中には自然の乳酸菌の他に雑菌や野生酵母なども入り、最終的には乳酸菌がその他の菌を駆逐するというプロセスを踏むことで、香味が複雑になることが期待できます。

近年では旨みや濃醇さをもちながら後味の良い酒を求める酒蔵は「生酛造り」の製法を多く採用するようになってきていますが、非常に手間が掛かる造り方であるともいえるのです。

現代の日本酒の主流の造り方:速醸酛造り

「速醸酛造り」とは酒母に高純度の醸造用乳酸を添加し、その力で野生酵母や雑菌を駆逐する方法で造った酒母のこと。

速醸酛造りだと、生酛のように自然の乳酸菌が酒母に入って乳酸を作るための期間(約2週間)がなくなるので酒母を早く作ることができます。

また自然の乳酸菌の仲間には酒を腐らせるものもありますが、乳酸菌を使わずに優良で適量の乳酸を添加しておくことで安定した生産が可能になります

したがって現在の日本酒づくりでは、この方法が主流となっています。

 

日本酒の元祖「どぶろく」とは?伝統の作り方とおすすめどぶろく」で、「もっとも簡単に『どぶろく』を作る工程で“ヨーグルトを添加する”」ということを紹介しました。

実はこの工程が乳酸を添加することを意味し、つまりここでいう“速醸造り”の方法であるといえます。

この工程のおかげでどぶろく作りの全行程が7日〜10日という非常に短期間でできるようになります。

また、家庭でどぶろくを作る場合は特に雑菌などの影響をうけやすいので、ヨーグルトの乳酸を投入することで、安定した発酵が期待されます。

海外でのどぶろく造りをご紹介していますが、日本では法律上ご自宅では造れませんのでご注意ください!

生酛造りのタンクの中では何が起きている?酒母ができるまで

伝統的な「生酛造り」では速醸の二倍の日数がかかります。

この間タンクのなかでは一体何が起こっているのか見てみましょう。

  • 酒母タンクに入って2〜3日目:硝酸還元菌が自然に増殖してくる
  • 5日目ぐらい:菌が仕込み水の中の硝酸塩を還元して亜硝酸を作る。これにより、次にくる乳酸菌が働きやすい場が作られます。
  • 亜硝酸ができるのと同時に、乳酸菌もまた自然に増殖する。
  • 12日目あたり:乳酸菌が乳酸を生成しタンクの中を酸性にする
    酸に弱い雑菌は生きていられないため、役目を終えた亜硝酸還元菌はここで死滅。乳酸菌を作った乳酸菌も減少します。
  • タンク内の酵母が働き出して初めてアルコールができてきます。
    生き残っていた乳酸はこのアルコールによって死滅します。
    18日ほどかけてアルコールが生成される
  • トータルで1ヶ月ほど経った頃に、野趣にあふれる力強い酒母が出来上がる

この工程が生酛造りの特徴です。

仕込み水と蒸米を入れてアルコール発酵する「醪(もろみ)造り」

上記の工程でつくられた酒母をもとに、仕込み水と蒸米を入れてアルコール発酵を行う作業を「醪(もろみ)造り」といいます。

これらの材料を一度に合わせるのではなく、仕込みを「初添」「中添」「留添」と3回にわけることを「三段仕込み」と言います。

仕込みを三段に分けることで、タンクの中の乳酸が急激に薄められて雑菌が繁殖してしまうのを防ぎます。

 

また、「三段仕込み」という方法を取ることで徐々に酵母の生育の場を広げられ酵母の優位性が保たれます。

醪の中では麹の力によって蒸米が次第に糖化されていき、その糖を酵母菌が食べながら発酵してアルコールを生み出していきます。

 

この発酵法は糖化と発酵を同時に行うことから「並行複醗酵」と言われ、世界的にも珍しい技法です。

 

この2つのバランスを管理することが大事で、もろみの温度や泡の出具合、香りなどの観察と細かい調整が要求されます

もろみのタンクかに仕込んで三日目くらいで、ブクブクと泡が出てきますが、これは酵母菌がアルコールを作り出している証拠です。

10日目くらいから泡の発生は次第におさまり、20日以上経ったあたりで、醪の完成となります。

そして酒造りの最終段階である、『上槽』や『絞り』といわれる作業で、仕込みを終えたもろみは、圧搾して生原酒と酒粕とに分けられ、出荷される状態になります。

さいごに

いかがでしたでしょうか?

工程や手間暇をわかった上で日本酒を味わうとより一層美味しさを味わえるかもしれません。

せっかくお読みいただいたので、頭の片隅に入れておいてください。

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すぎたま
日本酒メンター・福岡のきき酒師|“やさしい日本酒案内人”として日本酒をもっと気軽に楽しめるように情報をお伝えしています!|好きな銘柄は「風の森」「鳳凰美田」「田中六五」。|住吉酒販(福岡県)公認パートナー|唎酒師(ききさけし)・日本酒ナビゲーター|日本酒好き本職IT系サラリーマン|酒屋さんをはじめとするWebサイト制作やWebツール活用などのお手伝い
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