日本酒の知識

知られざる秘密!?「どぶろく」の誕生から酒税法施行と現在

 

日本酒の元とも言えるどぶろくですが、今では酒税法によりどぶろくは国内では自宅で勝手に作れなくなってしましました。

 

今回はどぶろくの誕生から酒税法により禁止された現在までの歴史について見てみましょう。

 

 

1. どぶろくの誕生

 

現代の考古学によると、日本列島の稲作のはじまりは次のように考えられています。

 

二千数百年前、九州島の一角(現在の佐賀県・福岡県)で形の整った水田が出現します。

これこそ、日本列島における本格的な稲作の始まりといえます。

 

この食料生産に基づく暮らし、稲作・米食の開始をもって、人々の生活は大きく変貌を遂げ、その後の現代にまでつながる文化、社会の基礎と方向を決定することになります。

 

そして稲作の伝来とともに縄文時代は終焉し、弥生時代が開幕します。

 

やがて、現在の清酒の祖型ともいうべき、米を原料とする醸造法も伝来し、それがどぶろくであり、このどぶろくの中から清酒が誕生しました。

 

2. どぶろくの悲劇

 

そして時は流れ、弥生時代から二千数百年を経て、日本は近代国家への途を歩み始めます。

明治新政府は、日本帝国欽定憲法を公布し、天皇制のもと、帝国主義の道をひた走ります。

 

その主要財源としてねらわれたのが、清酒を始めとする酒類でした。

さまざまな産業が未発達であった当時、清酒には江戸時代を通じて培われた近代産業としての底力がありました。

 

清酒を始めとする酒類の製造の新規参入には巨額の資金の献上が必要な免許制に仕立て上げられ、その酒類には酒税という重税が課せられるようになります。

 

酒税は酒類の価格に上乗せされ、消費者が支払う消費税です。

 

この酒税収入をより確実なものにするため、酒税収入を見込むことのできない農家の自醸酒どぶろくは、徹底的に弾圧されることとなり、明治32年(1899年)、ついに農家のどぶろくは密造となりました。

 

どぶろくの悲劇はこの時に始まったといえます。

 

そして民主憲法の時代となっても、国税庁は『どぶろくは密造』というたてまえを取り続けています。

 

現在は酒税法に基づく酒類となっているため、醸造にあたっては関係当局への許可申請が必要となっており、許可を得られれば、どぶろくの醸造をおこなうことができます。

 

しかし、酒税法によって日本では許可なく酒類を製造することは禁じられています。

酒税法上の罰則規定によれば、製造するだけでも5年以下の懲役または50万円以下の罰金となっています。

 

3. 日本の伝統・どぶろく

 

しかし、どぶろくは日本の伝統色文化であり、これを禁ずるのは精神的自由権、職業選択の自由など日本国憲法に違反するとして、酒造りの自由化を主張したどぶろく裁判なども行われました。

 

この裁判で原告の前田俊彦氏は敗訴しましたが、その後も自家醸造の自由化を求める動きも根強く、どぶろく特区が設置されるなど、酒税法の見直しも進んでいます。

 

なお、フランスやドイツ、イタリアなどでは自家醸造を禁止したことはなく、かつて自家醸造を禁止していたイギリスは1963年に、同じく禁止していたアメリカ合衆国も1979年に解禁しました。

 

日本ではどぶろく造りを解禁しようという動きもあるものの、解禁には至っていません。

 

明治年間の自家醸造以前の時代では、農家などで自家生産、自家消費されていたどぶろく作りも禁止されてはいるものの、しかし家庭内で作ることのできる密造酒でもあるため摘発は非常に難しいというのが現状です。

 

4. どぶろく特区

 

豊穣祈願などの宗教行事や地域産品としてのどぶろくを製造する地域は日本各地に存在します。

 

2002年の行政構造改革によって、地域振興の観点から構造改革特別地域が設けられ、同特別区内でのどぶろく製造と、飲食店や民宿等でその場で消費される場合に限った販売が許可されるようになりました。(通称・『どぶろく特区』と呼ばれています)

 

同特別区外へ持ち出すことになる『みやげ物としての販売』に関しては、酒税法が適用されるため、酒類販売の許可および納税が必要となります。

 

また、実際には酒税法にて最低醸造量として定められている年間6キロリットル(一升瓶にして約3326本)という制限を撤廃したのみで、アルコール度数の検査等、酒税法に記される検査はあまり変わっておらず、自家醸造の自由化とは程遠い内容とも言われています。

 

 

いかがでしたでしょうか?

 

まだかなり限定的ですが、特別区として許可する動きもあるようです。

いつかまたそれぞれのお家で昔ながらの伝統の手法でどぶろくを製造できる日が来ると良いですね。

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すぎたま
日本酒メンター・福岡のきき酒師|“やさしい日本酒案内人”として日本酒をもっと気軽に楽しめるように情報をお伝えしています!|好きな銘柄は「風の森」「鳳凰美田」「田中六五」。|住吉酒販(福岡県)公認パートナー|唎酒師(ききさけし)・日本酒ナビゲーター|日本酒好き本職IT系サラリーマン|酒屋さんをはじめとするWebサイト制作やWebツール活用などのお手伝い
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